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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ベン・ボバ(ベン・ボーヴァ)『星の征服者』感想

著者:ベン・ボバ(ベン・ボーヴァ)(Ben Bova)
原著:The Star Conquerors (1959) 
訳者:福島正実
刊行:講談社 少年少女世界科学名作全集(17) 1962年


存在は幼少期から認知していたが、積極的に入手を図るほどのモチベーションはなく(*)、無料もしくは低価格で読めるような機会もないまま今に至っていたところ、「国立国会図書館内/図書館・個人送信」で閲覧できることに気づいて読んでみた。

総合的に見れば水準作と言えるだろうか。

良くない点:
・序盤から終盤まで、大半のページが宇宙艦隊の艦隊決戦ばかりで平板。
・ジェフ青年(ジェフリー・ノーランド少佐)が、若い身空であまりにも全地球の全権を自由にし過ぎており、物語全体の説得力を損なっている。世の中はそんなに甘くはない。少年読者が感情移入しやすいように主要登場人物をごくごく若い若手士官にした思惑は分かるが、絵空事を絵空事と感じさせないために、もう少し工夫が欲しかった。
・テーマがあるのは良いが、料理の仕方が下手。

良い点:
・テーマがあること。中盤で(いささか唐突に)出てきた人類播種テーマと超古代文明テーマであるが、これでもあるのと無いのではSF小説としての厚みが全く違ってくる。そして終盤で明かされるマスターズ星人の正体――そして最後のマスターズ星人との対話は、重く、深い問題を我々に提起している。日本の翻訳SF史において、十指を数える児童向けSF全集が編まれ、二・三百を下らぬ児童SFが刊行されたが、これほどの問題を提起した作品は稀なのではないか。

* 『天候改造オペレーション』も『キンズマン』もさほど面白かった記憶がないので。

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