久しぶりに再読。以前読んだのは石泉社銀河書房の《少年少女科学小説選集》版だったが、今度は講談社《少年少女世界科学名作全集》版である。訳者も同じで、基本的には同一内容のようだ。
で、感想としてはやはり素晴らしい。卓越した、完全無欠な、百点満点のサイエンス・フィクションである。これを然るべき時代に然るべき年齢で読んで世代間宇宙船テーマを認知したSF読者がうらやましい(*1)。
なお今回は本書の優れた点にもう一つ気付いた。それは本書の結末が《少年少女科学小説選集》や《少年少女世界科学名作全集》の大半の作品とは違い、単純な大団円ではないことである。
……確かに「船」の危機は回避されたし四つのセクションは交流を回復した。しかもアルファ・ケンタウリには都合よく居住可能な地球型惑星が存在していた。しかし「人類の愚かさ」自体はほとんど解消されていないのである。「機械の国」のフィル親子、「森の国」のサッチャー、「娯楽の国」のジェブスといった悪役たちは結末においても改心の色が見えない。直接的な描写はないが恐らく「ふしぎの国」の象牙の塔に閉じこもった科学者たちの多数派も同様だろう。
彼らはこれまでの誤った安寧を捨てて第二の地球に移住する決断ができるだろうか(それとも何の意味もなく虚空を飛び続けて「船」の寿命とともに滅亡するだろうか)? もし移住したとしても、新社会における害悪の種になるだけではないか?
考えさせられる。
*1 SF歴1年目後半か2年目前半ころに『宇宙の孤児』のジュブナイル版である『さまよう都市宇宙船』(福島正実訳、あかね書房少年少女世界SF文学全集)を読めたのは幸運だったが。