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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

SFロマン文庫を語る 第17回

SF少年文庫/SFロマン文庫17巻、短編集『超世界への旅』の紹介です。
手元に無い状態で書いているので至らない点は勘弁願います。レビュアーにとって嫌いな巻の一つであり、現役時代にもほとんど再読していないし、成人してからは一度も読み返していないので記憶はかなりあやふやです。

 
【ビブリオグラフィ > 基本データ】
巻号:17
題名:超世界への旅
副題:日本のSF短編集
原書:--
編者:福島正実
著者:福島正実、眉村卓、光瀬龍、石原藤夫、中尾明、北川幸比古、矢野徹
訳者:--
イラストレーター:中山正美(ほか?)
対象年齢:小学校中学年~小学校高学年程度(※レビュアーによる見解)
 
【レビュアーによる評点 (S, A, B, C, D) 】
アンソロジーとしての総合評価:C
 
【概要】
14巻『時間と空間の冒険 世界のSF短編集』と対を成す、日本SFのアンソロジー。現代作家のジュブナイル作品10編を収録する。
 
【各作品の紹介&評価】
『遠くはるかに』 福島正実
内容:電話の混線で、主人公の少年が並行世界(その世界の日本は政情不安定らしい)の少女とつながる。
感想:で? としか思えない。
評価:D
 
『少女』 眉村卓
内容:少年の元に、未来から自分の娘が会いに来る。
感想:典型的な眉村卓式少年小説。その範囲内では必ずしも出来は悪くないが、センス・オブ・ワンダーは薄い。レビュアーの好みではない。
評価:C
 
『あばよ! 明日の由紀』 光瀬龍
内容:主人公の少年と、不良少女の意識が入れ替わる。謎の背後にちらつく一人の催眠術師の影。そして真相は・・・
感想:つまらない。旬が過ぎており痛々しい。
評価:D
 
『無抵抗人間』 石原藤夫
内容:マッド・サイエンティストが固形の物体を無抵抗状態(他の固体とぶつかってもすり抜ける幽霊的な状態)に変える装置を発明する。男は自らを装置にかけ、「無抵抗人間」にしてみるのだが・・・
感想:実に石原藤夫らしい、ユーモア味のある正統派ハード・サイエンス・フィクション。良作。
評価:B
 
『色盲の町』 中尾明
内容:光化学スモッグの影響で日本中が色盲だらけになる。
感想:ふーん。それで?
評価:D
 
『わたしたちの愛する星の未来は』 北川幸比古
内容:記憶なし。
評価:--
 
『サイボーグ』 矢野徹
内容:祖父が若いころに火星で体験した恐怖譚。祖父が人里離れた基地で出会った男はサイボーグだった。男は生身の楽しみを再び味わうために内臓を譲るよう祖父に迫るが……
感想:科学は善、進歩は善、未来はバラ色という陽性なSFばかり読んできたレビュアーにとって、おそらく初めに出会った陰性のSF。考えさせられる。
評価:B
 
『白いラプソディー』 福島正実
内容:記憶なし。
評価:--
 
『ぼくたちは見た!』 眉村卓
内容:記憶なし。
評価:--
 
『悪魔の国から来た少女』 福島正実
内容:主人公の青年が助けた娘は超能力を持った新人類だった。主人公は人類と新人類の暗闘にまきこまれる。
感想:陳腐。80年代に文庫や新書で掃いて捨てるほど出たSFまがい伝奇アクション(平井和正、豊田有恒、田中光二、その他有象無象どもが乱作してたやつ)と同じ香りを感じる。
評価:D
 
【総評】
つまらない。
個々の作品については、スケールの小ささと言い、発想の飛躍性の無さと言い、子供だましぶりと言い、大半が語るに値しない。まともなのは石原藤夫の『無抵抗人間』と矢野徹『サイボーグ』のみ。呆れたものだ。
アンソロジーとしても下の部類。年代、テーマ、作風、作家のバリエーションが貧弱過ぎる。特に、10編中3編が福島正実の作品なのはどういう了見なのか。役得としか思えない。面白ければまだ許せるのだが、面白くないのである。レビュアーが国産SFをあまり好きではないというバイアスもあるし、翻訳ものと国産ものを単純に比べるのは難しいが『時間と空間の冒険』と比べると雲泥の差である。これが名編集者ともSFの鬼とも呼ばれた男の仕事なのか?
 
【異版情報】
SF少年文庫→SFロマン文庫→SF名作コレクション
ただし、平成版は『色盲の町』が『色をなくした町』に改題されている模様。事情はたぶんポリコレでしょう。
あと、本ブログで度々言っているように、本文庫の国産SFは単にレベルが低いのみならず旬が短い傾向がある。本書の収録作の大半も例外でない。それを平成にまでリプリントするのは鑑識眼が無いと思う。
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