“ロビンソン・クルーソーのモデル”として著名なアレクサンダー・セルカークを題材にしたドキュメンタリー文学。
『フライデーあるいは野生の生活』に続く、ロビンソナーデ再読である。おそらく少年時代に1・2回、学生時代に1・2回読んだことはある記憶はあるが内容もほとんど覚えていないので新鮮な気持ちで読めた。
とても良い読書ができた。ロビンソナーデとしては(置き去り前と救助後のパートが意外と多く、少々食い足りなさはあるが)秀逸だし、スペイン・イギリス・私掠船を中心とした当時の情勢も興味深いし、アレクサンダー・セルカークという男(本当の本名はセルクレーグであってセルカークはイングランド的訛りなのだが)の人間性と人生も興味深い。
これで自分の知っているロビンソナーデは一通り再履修が完了した(『二年間の休暇』と『神秘の島』は比較的近年読んでいるので読むにしてもそのうちにしたい)。心地よい達成感を覚える。作者たちに感謝したい。
そして、学研《アドベンチャー・ブックス》の秀逸さを改めて思い知った。こういうセンスが良く志の高い出版物を出していたのが昔の少年向け出版業界だったんだよ。今の出版界は過去を知らないから困る。
なお、セルカークの救助者であるウッズ・ロジャーズ船長はセルカークを抜きにしても歴史的にそれなりに知られた人物らしい。その著書『世界巡行記』が岩波書店から訳出されていることを知ったのでそのうち読んでみたい。
追記 ダンピア船長もそれなりに知られた人物らしい。同じく岩波書店の「17・18世紀大旅行記叢書」から『最新世界周航記』が訳出されているようだ! そのうち何とかして読んでみたい。
さらに追記 『
ダンピアのおいしい冒険』という近年の国産の漫画を認知した。『無人島の王さま』では無謀で強欲な私掠船船長としての悪い面ばかりが描かれたダンピアであるが、この漫画では探検家にして博物学者としての側面が描かれる模様だ。実に志のある漫画だ。ポップな絵柄も良い。これから読み進めて行こう。