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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

木村毅『大衆文学十六講』感想

たまたま図書館で見かけてピンと来たので、「第六講 ユートピア物語と科学小説」を中心に読んでみた。

なかなか興味深い内容だった。1933年の時点で日本の有識者が欧米のSF小説に関してまあまあ正確な認識を有していたことが分かった。

ただし古典的ユートピア小説以外だとヴェルヌ、ウェルズ、チャペック、そしてボグダノフの『赤い星』が言及されているだけで、情報量的にはかなり寂しい。枚数に制限があったのか、著者があえて要点を絞って論じたのか、著者が情報を持っていなかったのか、著者に限らず当時の日本人は情報を持っていなかったのか。特に、すでに隆盛を見せていたアメリカのパルプSF界について全く言及がないのはどういうことだろうか? まさか
大衆文学がユダヤ人扱いせられた期間は随分長かった。【改行】論壇は、いま漸くその冬眠から醒めかけている。大衆文学は、それをかつて手にした事もない、これに全く無縁な左翼や芸術派の気まぐればかりでなく、本当の愛好家の間から論議の対象とせあっれだした。喜ぶべきことだ。【改行】この機運が向いたればこそ、貧拙ながら私のこうした著述も纏まる機会に遭逢したのである。初学の諸君に何等かの暗示か刺激になってくれればと念じている。(以上、p13「序」の冒頭より引用)

とまで言い切った著者が、結局スノビズムに陥ってパルプ雑誌を蔑視し無視していたとは考えたくないが……
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