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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ハウフ『魔法物語』感想

種村季弘訳
河出書房新社 1993年

急にハウフが再読したくなり、調べてみたところ『隊商』の新訳(かつ、初めての一般向け訳書)が出ていることを知ったので図書館で借りて読んでみた。

記憶していたとおり面白かった。やはり、時代を超えて読み継がれる古典的名作である。

翻訳も基本的には悪くないが、刷り込みかもしれないが以前主に読んでいた版(おそらく少年少女学研文庫、塩谷太郎訳の『隊商』)と比べると違和感のある個所がところどころにあった。その最たる点の一つがオルバサンの部下がオルバサンを「実力者」と呼ぶシーンだ。原語を確認はしていないが私の素直でナチュラルな感覚からすると「親分」とか「ボス」とか、あるいは文脈からすると「(この場の)責任者」くらいの訳語が妥当なのではないか? それとも私は何かを勘違いしているのだろうか。

あと『魔法物語』という、どうとでも取れる邦題がいまいち良くないと感じる。原題がどうとでも取れるもの(だと今回初めて知った)だから合わせてしまったのか、あるいはまた別の下手な考えの賜物か。本邦で人口に膾炙している立派なタイトル『隊商』を踏襲すれば良いものを。

なお、原作がそもそも児童向けであるため既存の児童向け訳書が完訳性に関してはコンプリートしており、本版にしか書かれていないことは恐らく何もないことが分かった。

追記修正 原題は資料によっては"Die Karawane"のようだ。
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