ジャック・ウィリアムスン『航時軍団』感想

かなり久しぶりに再読。武部本一郎のイラストがある方が好きなので、今回は文庫版を選択。

記憶していたより格段に面白い。まずは何より、善が栄える黄金境の未来と悪が栄えるディストピアの未来が自らの存在実現のために過去改変を図るという根幹的アイディアが先駆的であり優れている。歴史上の激戦地から戦死者を拾って蘇生（厳密には、そのまま放置すれば戦死することが確定している人物を死ぬ寸前に救い出して超技術で治療）し、リクルートするというサブアイディアも卓越している。また、二つの世界を象徴する善のヒロインと悪のヒロインの魅力が物語に説得力を与えている。そして、物語の隅々までピリリとした空気というか一流SF特有のアトモスフィアが行き渡っていることを評価したい。

SF者を何十年もやっておきながら本作を過小評価していたと言わざるを得ない。反省する。