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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ハミルトン『鉄の神経お許しを 他全短編』感想

創元SF文庫(2007年)
キャプテン・フューチャー全集 11


蔵書より。久しぶりに再読。

いやあ、やはり素晴らしい。メインの7つの短編(というか中編?)はぐうの音も出ない傑作ぞろいである。長編よりも一時代後に異なるコンセプトで書かれたという事情もあろうが、いずれもフィーチャーメンたちの(あるいはエズラ・ガーニーやジョン・カーリーの)内面をしっとりと描き切っており、文学として満足のゆく作品ばかりである。

まがい物(→先日のエントリ)と本物の違いを痛いほど思い知った。

私が特に高く評価したいのが『衛星タイタンの〈歌い鳥〉』である。むかしSFマガジンのバックナンバー(ハミルトン追悼特集号)で読んだ時から気になってはいたのだが、本編(長編群)ではあまり描写されないサイモンの人間性、そして肉体を持つこと(あるいは持たないこと)の悲哀が歳を取ってから読むと尚更染みる。文学としても、SFとしても、スペース・オペラとしても、《キャプテン・フューチャー》ものとしても傑作と言えるだろう。

おまけの17編の掌編サイド・ストーリー(と言いつつもいくつかは立派な短編である)も面白いし興味深い。なお、これらはハヤカワ文庫版の各巻末に付いていたものの再録かと誤解していたが、本書の巻末に
「フィーチャーメンの乗機〈コメット〉」は一九七二年五月にハヤカワ文庫SFより刊行された『謎の宇宙船強奪団』および、一九九五年九月に同文庫より刊行された同書改定新版に所収された。
とあることから、それ以外の16編は日本初紹介だったようだと今回気づいた。(つまり、逆に、ハヤカワ文庫版の巻末に載っていたちょっとした舞台紹介とか登場人物紹介は翻訳ではなく野田昌宏のオリジナル原稿だったのであろう。)

追記:『もう地球人では…』のジョン・カーリーって本編で言及されたことはある人物だったろうか。ゴーハム・ジョンソンとかマーク・カールーの名前はしばしば見た記憶があるのだが。
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