【経緯】
《レンズマン》シリーズのうち、私が最初に触れた巻(*1)であり、最も好きな巻でもある。久しぶりに読みたくなったのでこれを機に電子書籍として買い直すことにした。
それを機に調べ直したところ、甚だ今さらながら《レンズマン》シリーズには(児童向けを除いても)大きく分けて三系統の翻訳が存在することを認識した。
(A)早川書房版:訳は井上一夫、川口正吉。
(B)旧創元版:小西宏訳。
(C)新創元版:小隅黎訳。
《レンズマン》と言えば創元だと思っていたのだが、早川版なんてあったのか(しかも発行時期は旧創元版とほぼ同時……二社の激しい相克があったのだろうなあ)。また、創元の新版はただの改装版だと思っていたのだが、新訳だったのか。不勉強だった。
さて、電子書籍としての選択肢は今の私には次の三種があった。
(イ)Amazon Kindle グーテンベルク21版(小西宏訳であることから、明記はされていないが旧創元版を電子化したものと思われる)
(ロ)Amazon Kindle 新創元版
(ハ)ヨドバシカメラ 新創元版
実質価格の安さを重視するなら(ハ)であるが、試し読みの結果、やはり最も馴染みのある小西宏訳であることを重視し、(イ)を購入するに至った。
【感想】
現代人の成人からすると耐えがたいほど陳腐で幼稚で退屈だとも取れようが、それでもなお、えもいわれぬ魅力がある。(cf.
アルフレッド・ベスターのE・E・スミス理論)
また、これまであまり意識していなかったのだが、陰謀論的歴史SFとしての側面があるのも興味深い。
あと、例によってであるが”子供のころ愛読してた児童向けリライト版の秀逸さを再認識”した。調べてみると『銀河系防衛軍』は小尾芙佐訳だったようだ。この人もやり手だなあ。単にアトランティスパート、ローマパートを削って“短くした”だけではなく、読みやすくなるよう全体的に実に細やかに手を入れていたことが察せられた。思うに、彼ら“リライトの名人”たちは原作者たちよりはるかに文筆家としての腕が上なのだ(無から有を生み出す能力は未知だが、実際に文を書く能力については)。彼らの“本気”が見たいものである。
*1 あかね書房《少年少女世界SF文学全集》の『銀河系防衛軍』として。