THE BOY WHO HAD THE POWER (1971) by Jean and Jeff Sutton
角川文庫SFジュブナイル(昭和52年)
ジーン&ジェフ・サットン 著
滝沢比佐子 訳
蔵書より。昔々、たしか学生時代に収集目的で入手して2・3回流し読みしたきりだったものを久々に再読した。精読は初めてか。
意外と楽しめた。これまではファンタジー(悪い意味での)寄りの、子供騙しの、二流半どころのジュブナイルSFという印象を抱いていたのだが、私が間違っていた。かなりの秀作だ。
記憶喪失の少年主人公が状況に翻弄されたり虐待されたり、謎が増えるばかりで謎を解く糸口が全く見えて来なかったりで、序盤から中盤はなかなかフラストレーションが溜まる。それに中盤までは上記したようにあまりSF性があるように感じられない。しかし終盤で物語は一気に加速し、意外性のあるストーリー展開の中で主人公の人生は開け、世界の謎は解け、これが本格未来テーマSF(*1)・超人類テーマSF(*2)であったことが明らかになる。フラストレーションが大きかったぶん、カタルシス効果もまた大きい。
ペース配分など随所に不器用さは感じられるが、センス・オブ・ワンダーのある良きジュブナイルSFだった。
*1 軽くしか語られないがこの作中世界の未来史はとても魅力的だ。
*2 超能力者対催眠術師という構図も極めて興味深い。