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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

サットン&サットン『惑星ドーンの少年』感想

THE BOY WHO HAD THE POWER (1971) by Jean and Jeff Sutton
角川文庫SFジュブナイル(昭和52年)
ジーン&ジェフ・サットン 著
滝沢比佐子 訳

蔵書より。昔々、たしか学生時代に収集目的で入手して2・3回流し読みしたきりだったものを久々に再読した。精読は初めてか。

意外と楽しめた。これまではファンタジー(悪い意味での)寄りの、子供騙しの、二流半どころのジュブナイルSFという印象を抱いていたのだが、私が間違っていた。かなりの秀作だ。

記憶喪失の少年主人公が状況に翻弄されたり虐待されたり、謎が増えるばかりで謎を解く糸口が全く見えて来なかったりで、序盤から中盤はなかなかフラストレーションが溜まる。それに中盤までは上記したようにあまりSF性があるように感じられない。しかし終盤で物語は一気に加速し、意外性のあるストーリー展開の中で主人公の人生は開け、世界の謎は解け、これが本格未来テーマSF(*1)・超人類テーマSF(*2)であったことが明らかになる。フラストレーションが大きかったぶん、カタルシス効果もまた大きい。

ペース配分など随所に不器用さは感じられるが、センス・オブ・ワンダーのある良きジュブナイルSFだった。

*1 軽くしか語られないがこの作中世界の未来史はとても魅力的だ。
*2 超能力者対催眠術師という構図も極めて興味深い。
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