最近の《未来史》復習の流れでやや久しぶりに再読。
やはり良作だ。良きハインライネスクが発揮されている。《未来史》で描けなかった金星の独立というテーマを消化したという意味でも、ハインラインを語る上で意義深い。ハインラインが(勝手な憶測だが)未来史本編よりも遥かにエンジョイして創作できている気配が感じられるのも良い。このテーマが「プロクルステスの寝台」に合わせて書かれるのではなく最善の形で書かれたことを真のハインライン愛読者は喜ぶべきであろう。
例によって邦題(*)がパッとしないのが惜しまれるが、ハインライン・ジュブナイルを重点的に刊行してくれた創元の良き出版活動に賛辞を送りたい。
(再認識したのだが)翻訳者が鎌田三平で、「訳者あとがき」を書いているのも興味深い。私にとっては《デュマレスト・サーガ》の印象が強い人物で、この人のような創元系の職人的翻訳者は本当に翻訳しかしない印象なのだが本書では珍しく作品に関する論評や自らのSF歴を語っている。この人も昭和30年代・40年代の児童向け翻訳SF全集を愛読していた口だと分かって強いシンパシーを覚え、嬉しくなった。
*2025/3/29追記 作中にもそれらしい文言は出て来ない。ひょっとすると自衛隊の軍歌の「栄光の旗のもとに」のもじりだろうか?