青心社SFシリーズ 1982年
安田均編
少年時代に一度だけ読んでいたところ、国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能になっていたことを機にとても久しぶりに再読してみた。
とても読み応えのある、志の高いアンソロジーであることがようやく理解できた。思えば前回読んだころは全くもって未熟者で本書の良さが何も分かっていなかった――と言うよりほとんど飛ばし読みしかできていなかったのかもしれない。記憶が蘇ってくる箇所がほとんど無かったのである。
『進化した男』:ほとんど覚えが無かった。実にハミルトンの短編らしい、かつパルプのクラシックらしい、アイディアと幻想味が両立した古き良き短編SFと言える。
『星々の轟き』:表題作なのに全く覚えが無かった。なぜ近隣の有望な恒星系にあらかじめ偵察隊を送っておかずに全人類が見切り発車してしまうのかという無粋な突っ込みもしたくなるが、勢いとスケールは見事だ。「世界の破壊者」ハミルトンの面目躍如と言える。
『呪われた銀河』:これも(創元のアンソロジーで復習しているが本書の収録作としては)全く覚えがなかった。これも「暗いハミルトン』の秀作。
『漂流者』:全く覚えがなかった。他のアンソロジーにも入っているはずだが、そこでもうっかりスキップしてしまっていたと思われ、つまるところ実質的に初めて読んだ。大作家ポオが題材とは面白い。また遠未来人の意識が現代人に転送されるという着想は『スター・キング』とも共通しており料理法の違いが興味深い。
『異星からの種』:これも全く覚えがなく、事実上初めて読んだ。素朴ながら独特の物悲しい味わいのある、古き良きパルプSFである。
『レクイエム』:これも全く覚えが無かった。ディティールは紋切型のオンパレードだが、読み進めるにつれ独特の哀愁が伝わってくる秀作だった。
『異境の大地』:唯一はっきりとした記憶があった作品。優れたアイディアのSFであり、おそらく優れた怪奇小説でもある。両立が見事だ。
『プロ』:これも(創元のアンソロジーで復習しているが本書の収録作としては)全く覚えがなかった。今にしてみれば秀逸なメタSFである。