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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ベリャーエフ『世界のおわり』感想

岩崎書店 ベリヤーエフ少年空想科学小説選集  Vol.1
訳:馬上義太郎
昭和38年

国土社の『地球の狂った日』をSFキャリアのかなり初期のころに読破していたため、より完訳に近い本版を読むことを長年怠っていた。かつて国立国会図書館児童分館に遠征してベリヤーエフ少年空想科学小説選集を閲覧した際も、時間的制約から、他に訳書がない巻を優先してしまい本巻を読んでいなかったのである。

それがようやく読んでみた。

ベリャーエフらしい、単純ながらも優れたアイディアと軽妙なストーリーが組み合わさった良作だった。

国土社版は、あれだけ削って骨子を保っていたのは大したものだが、それでもやはり小説として大事な
・戦間期ドイツを中心とした国際関係の機微
・主人公を含む各国新聞記者、政府関係者、そしてドイツ貴族の美女らの群像劇
という要素がどうしてもおざなりになっていたことが本書を読んでようやく理解できた。

記憶していなかった(もしくは国土社版だと削られていた)のだが、赤方偏移・青方偏移がはっきりと描写されているのもSFとして評価に値するだろう。

ベリャーエフはもう少し翻訳出版に恵まれてくれないものだろうか。主要作品の過半数は邦訳されているとも言えなくもないが、散発的、抄訳、入手困難の三重苦だ。本書のようにようやく国家的事業で電子化されたものもありわずかに状況は好転している面もあるのが救いか。


追記 本作は他に袋一平訳のものもあることに気づいた。さらにそれはSFマガジンに載ったもの(完訳であろう)とジュブナイルの全集に収録されたものに分かれるようだ。まあそのうち機会があれば読んでみよう。……察するに国土社版はそれをさらにアブリッジにしたものなのであろう。

追記2 久しぶりに検索したら『難破船の島』という知らない作品の翻訳が出ていることに気付いた。興味深くはあるが狭義のSFでは無さそうだし少々値が張るな。どうしようか。
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