図書館にて、たまには目先を変えようと児童書の棚をぶらりと見て回ってみたところ国土社《海外ミステリー傑作選》を発見し、ずいぶんと久しぶりに再読。現役時代ぶりだとすると(当時読んだのがこっちなのか旧版なのかは特定を避けるため明言を避けるが)まさに何十年ぶりということになる。このレーベル、
・極端なページ制限により、悪い意味でのダイジェスト主義に陥っている収録作が少なくない
・特に珍しくもない(完訳、またはより良い訳書が別のレーベルで手に入る)収録作が少なくない
のだが本作は例外であり、読む価値のある一冊である。
擦れ切った大人のSF読者が読んでも充分に面白かった。これといった特別なアイディアが盛り込まれているわけではないが、テンポが良くセンスのあるアクションが身上の佳作だと言える。おそらく本レーベルの狙いであろう、「ミステリ読者へのSF布教」にも適していると感じる。
イラストレーションもオシャレで作品に合っている。今にしてよく見てみると画家は横山宏であった。
さて、現役時代(子供のころ)にはSF作家を全然知らなかったのとそもそも「本には作者がいる」という意識が希薄だったので気にもしていなかったが、本書の作者「P・ヒース」とは何者だろうか。本書の現物をいくら検分しても作者のフルネームや原綴りは書かれていないし、本書の原題も書かれていない。そこで現代のインターネットの魔力を利用してみたところ、まずameqlistではこの人物を「ピーター・ヒース(Peter Heath)」としていることがすぐ分かり、それを元にisfdbを見てみたところこの人は
Mind Brothers三部作
- The Mind Brothers (1967)
- Assassins from Tomorrow (1967)
- Men Who Die Twice (1968)
という3冊のみを著している寡作家であることが分かった。
おそらく題名からして2番目のものが本書なのであろう。言われてみれば本作は若干いきなり始まった感覚とやけに含みを持たせたまま終わってしまった感覚があり、三部作の第二作だと考えると辻褄が合う。
福島正実はいったいどこでこんなマイナー作家のマイナー作品を見つけてきたのだろう。さすがプロの目利きはすごい。しかし、知ってしまったからには1と3も読みたい。誰か何とかしてくれまいか。