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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

E・R・バローズ『南海の秘境(マッカー・シリーズ1)』感想

存在を知ってから幾星霜、ようやく読んでみた。

確かにこれはバローズ作品の中ではかなり特異だ。主人公ビリーがこれまでのバローズ主人公――ジョン・カーター、カースン・ネイピア、デイヴィッド・イネス、その他もろもろ――とは一線を画しており、斬新さがある。また、一種の教養小説要素とでも言おうか、“マッカー”ビリー・バーンが、第一に水夫生活で、第二にはヒロインとの交流を通じて人間性を身につけていく過程も面白い。

しかし、それらの要素がバローズタイプ小説としての良さにつながっているかと言うと、あまりそうは思えない。またヒロイン(バローズ世界の登場人物たちの行動の原動力の9割である)における個性や魅力の欠如が、物語全体の説得力を著しく損なっている。バローズタイプ小説の骨子とも言うべき「エキゾチックな舞台装置」もパッとしない。中途半端だし、日本人から見るとどうも白けてしまう。

リチャード・A・ルポフがこの作品を激賞しているらしいが、同国人にだけ通じる微妙な機微があるのだろう。
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