『アレッサンドリア物語 ハウフ童話全集II』塩谷太郎訳 偕成社 1977年
『シュペッサルトの森の宿屋 ハウフ童話全集III』塩谷太郎訳 偕成社 1977年
『魔法物語』こと『隊商』に引き続き、ハウフの童話三部作を一挙に再読した。
記憶していた以上に面白い。「古い革袋に新しい酒」と言おうか、アラビアン・ナイトやドイツ民話を巧みにアレンジし、新鮮なエネルギーを吹き込んでいる。
偕成社版(塩谷太郎訳)を初めて読んだが、他社の訳と比べて問題なし。私の好みからすると――「小学上級以上向け」であればなおさら――もう少し漢字を増やして欲しいところではあるが。
『アレッサンドリア物語』は『若いイギリス人』が出色の出来ばえ。枠物語の枠がナポレオンのエジプト遠征を題材にしているのも興味深い。
『シュペッサルトの森の宿屋』は『つめたい心臓』が味わい深い。総合的に見て本書が三部作の最高傑作であろう。ヴィルヘルム・ハウフが夭折したことが惜しまれる。
追記 塩谷太郎という翻訳者は英語圏のSF・ミステリ等の抄訳でよく見かける人だったので英文和訳者だと思っていたのだが、巻末の訳者紹介によると本来は独文の人のようだ。意識していなかったがミヒャエル・エンデの『ジム・ボタン』二部作もこの人物だった。