一言でまとめると、「趣旨は大変すばらしいが、実際のラインナップには再考の余地があるように感じる。かつ、個人的事情によりなおさら楽しめなかった」。
不勉強で最近まで存在を認知していなかった。認知したので読んでみた。
『奇想天外』の傑作選とは実に志のある出版物だ。称賛したい。一冊と言わず、パート2、パート3といくらでも出してほしいが、無理なのだろう……
以下、収録作品のうちフィクションの感想。
H・F・エリス『宇宙探偵小説作法』…好きな作品。初出は『奇想天外』だったのか。
ロッド・サーリング『不死の条件』…これは『ミステリー・ゾーン』で見たことがある。その範疇では(テレビ視聴者にとっては)悪い作品ではなかろう。しかしサイエンス・フィクション読者にとっては凡庸に思える。
エヴァン・ハンター『金星の種子』…エヴァン・ハンターとは珍しい。しかし今ひとつ美点が分からないと言おうか、落ちていないように思えるのは、何かを見過ごしているのだろうか。
カットナー『教授退場』…ホグベン一家もの。いいね。
マック・レナルズ&オーガスト・ダーレス『時空海賊事件 ソーラー・ポンズの事件簿』…これも今ひとつ美点が分からない。
P・J・ファーマー『シャーロック・ホームズ アフリカの大冒険』…良い作品なのだが、個人的にこれが載った号を持っているという事情もあり、多くのページ数を本長編一作で占めるよりは、複数の短編を収録して欲しかったと思えてしまう。
鈴木いづみ『わすれない』、大和眞也『カッチン』…アマチュア(?)の作品のようだ。まさにその時点のその状況においては意味のある作品だったのだろうが、現時点の私としては全く興味を惹かれず、冒頭を流し読みしただけで放棄してしまった。国産作品ということならば、あまり単行本化されていないプロ作家(鏡明とか)の作品を採用してほしかった。