取りこぼし撲滅キャンペーン。今回は“ハヤカワ・SF・シリーズ”かつ“ポール・アンダースン”に着目してチェックしてみたところ、一冊だけ読んでいない本の存在が発覚した。それが本書『最後の障壁』である。(『たそがれの地球』は読んだことがあるのか無いのか、判断が付かなかったので今回は見送った。短編版の『明日の子供たち』は読んだ確信があるのだが。)
で、読んでみた。今一つだった。
登場人物に魅力が無いし、ストーリーも面白みがない。ガジェットにも、舞台となる近未来のディストピア気味なアメリカのディティールにもわくわくさせられるところがない。つまり娯楽小説として出来が良くない。
ガジェットとプロットが有機的に結び付いているかと言えば、それはいちおう達成されている。兵器開発競争において攻撃面が防御面を著しく上回っている現状に、“シールド”という完全防御テクノロジーがポンっともたらされたらどうなるか――というテーマは消化されていると言えなくもない。
しかし車両の両輪の片方たる小説としての出来が良くないため、SFとしての良さは、控えめに表現しても帳消しになっている。いや、SFとしての良さは顕現せず流産に終わっていると言うべきか。
うーむ。『無限軌道』、『敵の星』、『審判の日』、そして本書。文庫化されなかった長編はどれも正当な理由があったのだな。