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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ウェルズ『神々のような人びと』感想

実は長年のあいだ『神々の糧』と混同していたため、読むのは初めてである。

で、感想だがあまり面白くなかった。凡庸。平板。無味乾燥。旧態依然。お座なりの極致なストーリーに載って、ただただユートピア社会の素晴らしさが語られるという典型的なユートピア小説だ。何か裏があるのを私が読み取れていないだけなのだろうか。素直に読むと19世紀や18世紀のユートピア小説と悪い意味で何も変わらない。主人公がユートピアに迷い込むためのガジェットが、“南半球に向かう船”や“新型の麻酔薬”から、“並行宇宙への物理的な転移装置”にアップデートされているだけで。

わずかに救いと言えるのは、最初の数ページと最後の数ページが小説として悪くないことだろう。間の9割があまりにつまらないせいで過大評価してしまっているかもしれないが。

これが1980年代まで翻訳されずにいた――サンリオSF文庫という奇特なレーベルが気まぐれに翻訳したのでなければ未だに翻訳されずにいてもおかしくなかった――のも肯ける。麒麟も老いては駑馬に劣る。ウェルズも例外ではなかったようだ。
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