作:エルマンノ・リベンツィ(Ermanno Libenzi)
原題の逐語訳:狂人たちの惑星 ロボットの奴隷の書いた未来の空想史
訳:千草堅
刊行:立風書房 海外SF&ファンタジー 1979年
とても久しぶりに――おそらくウン十年前、中学生のころに1・2回読んで以来初めて――再読。
実に読ませる。記憶していた以上にキレている。SF仕立ての風刺小説として最高の出来栄えだ。その寓話的でシンプルな筋立て、平明な文章、分かりやすいテーマ性のため子供のころも「軽い読み物」としてそれなりに楽しめていた。しかし逆に言えばそれ止まりだったところ、大人になって改めて読むとさらに考えさせられる。(科学技術が飛躍的に進歩する中で)人間はいかに生きるべきか? SFの最も根源的なテーマに関する問いが本書では発されている。
イタリアSF侮りがたし。考えてみるとこの立風書房《海外SF&ファンタジー》の訳業は実にグッドジョブだ。他のイタリアSFと言えば、すでに半世紀を超えるSF翻訳史において(SFというよりSFみのある幻想文学であるイタロ・カルヴィーノやディーノ・ブッツァーティを除けば)片手で数えられるほど――
- リーノ・アルダーニの『第四次元』
- パオロ・ヴォルポーニの『怒りの惑星』
- エミリオ・サルガーリの古典『二十一世紀の驚異』
- Alternate Historyものらしい『時鐘の翼』(未読)
――くらいしか私は知らない。由々しい問題である。誰かもっと発掘して翻訳してほしい。