オラフ・ステープルドンの聞いたことのない未訳作品が聞いたことのない出版社から訳出されていたことに気付いたので、購入したものである。
実に志のある出版物だ。この出版社には――いやこれは自費出版なのかな?だとするとこの人物には――今後も期待したい。訳文も悪くなかった。
本作は1947年の中編で、内容的には語り手が太古から地球上で生きている鉱物生命(火炎生物と言うべきか)とテレパシーで接触するというもの。ファースト・コンタクトものであり、また人類家畜テーマとしても読める。『最後にして最初の人間』や『スター・メイカー』と同様の、遠大なビジョンを感じさせる、あのオラフ・ステープルドンらしい香りが素晴らしい。
しかし(申しわけないが)少々欠点も目立つ作品である。第一に動きの無さ。語り手と鉱物生命の対話が大半を占めており、動きが足りなくて退屈である。第二に冗漫さ。鉱物生命が物語るところは、結局本題につながらない部分も多く、冗漫で退屈である。第三に(一・二とも密接に関連するが)濃度の薄さ。内容はもちろん良いのだが、実質的な内容量の割には紙数が不要に多く、つまり濃度が薄くなってしまっているのが惜しまれる。なんとか半分くらい、あるいはせめて三分の二くらいの長さにシェイプアップすれば秀逸な短編になっただろうに、残念だ。これまで翻訳されずにいたのはそこら辺が理由だったのかもしれない。