スピンラッド『鉄の夢』感想

正月休みを機に久しぶりに再読。

やはり面白い。有無を言わさぬ圧倒的なエネルギーがあり、物語に引き込まれる。特に主人公フェリック・ジャガーが中盤でヘルドンの政権を奪取するまでの流れは全てが精緻に計算し尽くされており百点満点のエンターテインメントと言える。

この勢いが最後まで継続すればオールタイム・ベスト級の傑作になったのだろうが、後半、ジンドとの全面戦争に入って以降は少々雑さと単調さが目立ち、結末も意外性を欠くように思える(*1)のが惜しまれる。

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*1 「いや、文筆力が微妙な人が書いた設定のメタフィクションだからあえてそう書いてあるのであって、その非難は正当でない」という反論もあるかもしれないが、そこは悪文で充分に表現されており構成をあえて下手に装う必然性が見いだせないため私は本作の後半の不出来は意図的なものでなく地だと思う。