講談社文庫BX
『偉大なる幻想』に収録
深町真理子訳(*1)
今さら極まることを言って大変申し訳ないが(*2)、これは傑作だ。紛う事なき傑作だ。
最も初期のロボットものでありながら、ロボットものに必要な全てを完璧に備えている。まさに原点にして頂点である。またロボット・テーマは必然的に人類終焉テーマに話が行き着くものであり、その方面でも単純ながら骨太で説得力のある一流のSFとなっている。そしてこの重厚で緊迫感のある文学性に圧倒される。風刺性と寓話性も極めて優れている。
私にとってカレル・チャペックと言えば(『RUR』を理解できなかった)少年期よりも少し後で読んだ『山椒魚戦争』や『クラカチット』の印象が強く、どうして世間で『RUR』がもてはやされているのか理解に苦しんでいたのだが、その理由がようやく腑に落ちた。
*1 察するに英語からの重訳か。今度直訳も読んでみよう。
*2 実は、SF者を長年やっていながら本作をまともに精読したのは今日が初めて――未熟な少年時代に流し読みしてあまり面白くはない印象を抱いたまま一度も再読せずに今夜に至っていた(非国民、モグリ、たわけ者と呼ばれても全く反論できない)――なのである。それが今夜はなぜか急に再読したくなって手に取ってみた結果大きな衝撃を受けたわけなのだ。