『宇宙の孤児』からのつながりで、これまた久しぶりに再読。
イメージしていたより更に一段階か二段階は面白かった。実はこれまで数十回(少なくとも十数回)は読んでいながら、ハインラインの中では二線級の作品だと誤解していたのだ。ようやく本作が一流の作品だと理解できた。
また、甚だ今さらながら『宇宙の孤児』ではぼんやりとしか語られなかった恒星船の仕様が(バンガード号とニュー・フロンティア号がおおむね同型艦だとすると)より高い解像度で語られているのも興味深い。
そして(これまでは実は《未来史》シリーズについて興味が薄かったのであまり考えてもいなかったのだが)《未来史》における本作の立ち位置について考えが及んだ。なぜシリーズにおいて本作が(実質的に人類世界と切り離された『宇宙の孤児』や、書かれなかった『ダ・カーポ』や、晩年のしょうもない愚作のような例外を除き)時系列的に最後に位置するのか。それは本作で「(超光速どころか)事実上の瞬間移動航行」と「事実上の不老不死」という2つの革新的すぎる技術が登場してしまったことだ。恐らくハインラインはそのような技術が普及した世界を舞台にして小説が書けない、もしくは書きたくなかったのであろう。引き際を心得た好判断だ。