蔵書より。久しぶりに再読。記憶していた以上に面白い。
シリーズ17冊目であるが、シリーズ後期作にしばしば見られるネタ切れ感や手抜き感は感じられず、隅々まで精気が行き渡っている。また、後期にちょくちょく見られるメタ的テーマ性が非常にうまく行っている。
テーマと直接的には関わらないがカーティス・ニュートンが(正当防衛とは言え)明確に人を殺すシーン、カーティスとジョオンが明確にいちゃつくシーンが描かれることも興味深い。(*1)
“宇宙の恐怖”ブロール・イングマン、三文役者フロ・ザンといったゲストキャラクターたちも愉快に造形されており物語を盛り上げている。特にイングマンに関しては(原文と見比べてみたわけではないが)野田昌宏の訳がいつにも増して乗りに乗っている。
邦訳としても後期(15冊目)に属するが、ハヤカワ文庫版後期にしばしば見られるイラストの荒れもなく、表紙絵といい挿絵といい納得のゆく出来である。
ただし、あえて一つだけ言わせていただければ、本巻の邦題「フューチャーメン暗殺計画」はあまり良くない。内容の一面に即してはいるものの、「Days of Creation」という原題の含意を全く伝えられていない。私が思うにこの原題は
・「フューチャーメンによる新惑星フューチャリアの建造」が話の縦軸
・「記憶喪失になったカーティスが人間としてゼロの状態から自分を取り戻していく=キャプテン・フューチャーという男の(再)誕生」が横軸
であることを示している。そういうテーマを全く無視してしまうのはいかがなものか。
*1 ……と思ったら、調べてみたところ本巻は(後期にいくつかある、なぜかハヤカワ版の現物ではハミルトン作と銘打たれているが)別人の作だった。忘れていた。ブレット・スターリングことジョゼフ・サマクスン。他では全く聞かないSF作家だがこれを機に調べてみると(前回サマクスンに興味をもった時はインターネット時代ではなかった!)PJグーテンベルクでもいくつか作品が読めるようだ。作品の載った雑誌はGalaxy誌が結構多く、まともな作家のようだ。そのうち読んでみよう。