蔵書より。久しぶりに再読。きわめて秀逸なアンソロジーであり、作者とアンソロジストの力量を改めて感じた。
『アンタレスの星のもとに』…本書で唯一意義が分からない作品。紋切り型のバローズ亜流にしか見えないのだが、何か見どころがあるのだろうか。やや暗い雰囲気は独自性があると思うが。
『呪われた銀河』…宇宙論をテーマに、『反対進化』とも通じる後ろ向きなセンス・オブ・ワンダーを感じさせる。
『ウリオスの復讐』…アトランティスもの・不死ものの秀作。
『反対進化』…『呪われた銀河』の進化論版。これは『不思議な国のラプソディ』でも読んでいた作品だが、やはり暗いセンス・オブ・ワンダーが見事だ。人間とは何か考えさせられる。
『失われた火星の秘宝』…キャプテン・フューチャー・シリーズと共通の世界(時代もそう遠くないと思われる)を舞台にした、愉快な小品。こういう陽性の作品が一つくらい入っていると良いアクセントになる。
『審判の日』…過去の過ちを認める人類、それを認めて和解する動物たち。感動を覚える。
『超ウラン元素』…恐怖小説の文法とSF的アイディアがうまく結合している。派手なスペース・オペラの派手なベムに惑わされていたが、ハミルトンが得意とする異生物はむしろ本作や「太陽の子供たち」のような無機的生命なのではなかろうか?
『異境の大地』…これは少年時代に『星々の轟き』で読んで、気にはなっていたが当時は真価を理解できていなかったように記憶している。これも怪奇小説(というかメリット流)のスタイルとSF的アイディアがうまく結合している。
『審判のあとで』…地球が急な悪疫の蔓延で絶滅し、月に残された男たちの苦悩と決断が描かれる。シャープ。実にシャープだ。これは青年時代にSFマガジンのバックナンバー(ハミルトン追悼号だったか)で読んでいた。当時のほうが純粋に作品を味わえていた気がする。
『プロ』…必ずしも好きな作品ではないが、メタSFの秀作であることは認めざるを得ない。