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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

ヴェルヌ『黄金の流星』感想

偕成社 ベルヌ名作全集 Vol.2


昭和43年




ヴェルヌ晩年の長編、"La Chasse au météore (1901)"の恐らく唯一と思われる邦訳である。国会図書館デジタルコレクションにて再読。前回――五年前か十年前か――は国立国会図書館の児童分館に遠征して読んだのが隔世の感を覚える。


感想としては悪くない。後期のヴェルヌにしばしば(あまり上手くない形で)見られる風刺、ユーモア、寓話性が本作では珍しく(ようやく?)上手く働いているように思える。本来のヴェルヌに求めている味とは少々違うが、これはこれで悪くない。


SFとしては、「大量(180万トン)の黄金が空から降って来たら世界経済はどうなるか?」というプリミティブながら経済の本質を突いた興味深いテーマが扱われている。ググってみたところ21世紀初頭現在では全世界における黄金の採掘総量は約18万トンらしい。19世紀末~20世紀初頭ならそれより少々少なかったであろう。つまり全世界の黄金の総量が一挙に10倍以上に増えるわけだから大混乱が起きることは言うまでもない。しかも当時の社会は金本位制なわけだし。


ちなみにググってみたところ現時点で地金の相場は1gあたり1万円ほどらしい。つまり現時点で人類が有している黄金の総価格は


1.8*10^11 g * 10^4 円/g = 1.8 * 10^15 円


つまり約1800兆円になる。さらにググってみたところ現時点での人類の総資産額は約450兆ドル=7京円=7* 10^16 円らしい。つまり現時点で、人類の総資産に黄金が占める割合は3%ほどのようだ。意外と少ないような気もする。19世紀末~20世紀初頭だと黄金が占める割合はこれよりは大きかったと想像されるが。




追記 ちょっと疑いを抱いてWikipediaフランス語版を見たところ、案の定本作は死後出版であり息子のミシェル・ヴェルヌの手が入った作品であるらしい。いわく、オリジナル版ではゼフィリン・クシルダールが登場せず、流星の軌道が人為的に変えられることもないとのこと。なるほどなるほど。言われてみればとてもミシェルっぽい。

しかし考えてみると、(実際読んだわけではないが)オリジナル版のプロットは単純すぎて長編としては物足りないようにも思える。これはこれで良し。

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