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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

森岡浩之『夢の樹が接げたなら』感想

収録作品のうち2つがとても良かった。

『無限のコイン』
いくらでもありそうだが、意外と無かった類の作品。リアルタイムで(1990年代に)読んでいたら、おそらくあまり興味も惹かれなかっただろう(経済に関心がなかったし、キャッシュレスがこんなに流行るとは思っていなかったし)。
近年では、物理的貨幣を使うことがほとんどない国も現れてきていると聞くが、システム障害が起きたら本当にどうなるんだろう…?

『ズーク』
これも実に興味深く読めた。
難破した宇宙船というミクロコスモスで生き延びた二人の子供。きわめて狭い、すべてが把握できる、限定的な世界に隔離されて育つことは、言語にどのような影響があるのか?
『バベル=17』にも匹敵する、いやむしろそれ以上にワンダーを感じさせるスペキュレーション。見事だ。

2作品とも、黄金時代を思わせる、実に正統派の短編SFである。でありながら、素材がハード・サイエンスではなく人文科学であるのが面白いところだ。「こういうので良いんだよ」と「この手があったか!」を同時に味わう愉悦。
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