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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

主要な児童SF全集同士の継承関係ならびに類似性について

これまで1950年代~60年代の児童向けSF全集のいくつかをどうしても混同してしまう悪癖が抜けなかったので、その状態を脱却するための学習を兼ねて、それぞれの全集の継承関係の図示および類似性のポイント付けしてみた。
共通する作品がいくつあるかを基準とし、1作品1ポイントで計上した。ただし、同じ原作の翻訳であれば訳者が異なっていても継承関係と見なし、1ポイントとした。3つ以上の全集に収録されている作品については、最古のものから直接派生したと見なして計算した。
その結果が下図である。
  • a ウォルハイム「土星の輪の秘密」
  • b ハインライン「宇宙船ガリレオ号」、イーラム「少年火星探検隊」、マルチノフ「宇宙探検220日」、ガイル「ハンス月世界へ行く」、ハインライン「赤い惑星の少年」、カーター「地底王国」、ザレム「緑の宇宙人」、アダモフ「海底五万マイル」、ムーア「金星の謎」、ベリャーエフ「第十番惑星」、カポン「謎のロボット星」、ハラン「土星の宇宙船」
  • c ジョーンズ「星からきた少年」、レッサー「第二の太陽へ」、ライト「謎の遊星」
  • d イーラム「少年火星探検隊」、マルチノフ「宇宙探検220日」、ガイル「ハンス月世界へ行く」、ハインライン「赤い惑星の少年」、アダモフ「海底五万マイル」、ハインライン「宇宙戦争」、カポン「謎のロボット星」
  • e ジョーンズ「星からきた少年」、ライト「謎の遊星」
  • f エリオット「宇宙少年ケムロ」
  • g マーステン「恐龍の世界」
  • h ウェルズ「月世界地底探検」
  • i ベリャーエフ「合成人間」
  • j アンダースン「500年後の世界」
  • k フレンチ「九号衛星のなぞ」、ボンド「宇宙人ビッグズの冒険」、メレンチェフ「宇宙紀元ゼロ年」、ウェルズ「タイム・マシン」、レーサム「消えた土星探検隊」、レッサー「宇宙大オリンピック」、ムーア「凍った宇宙」
  • l クラーク「宇宙島へ行く」
  • m ワイリー「地球さいごの日」
  • n バローズ「火星のジョン・カーター」、ヴェルヌ「地底探検」、ガーンズバック「27世紀の発明王」 
  • O デル・リイ「海底大陸アトランティス」、ナース「流刑星タイタン」
  • p ハインライン「宇宙怪獣ラモックス」、フレンチ「太陽系の侵入者」
  • q ベリャーエフ「両棲人間1号」
  • r ウェルズ「宇宙戦争」

興味深い関係が見えてきた。
明瞭なグループは2つ:
(A)講談社の3全集で1グループ。
(B)岩崎の「少年少女宇宙科学冒険全集」と「SF少年文庫」の2全集で1グループ。
である。
また、最古の全集である石泉社「少年少女科学小説選集」と、上記Aを統合して1つの超グループとしても良いかもしれない。

そして当初の目的に戻ると、つまるところ混同の原因は2つだったと分かった。
(1)講談社の3全集の内容の中途半端な共通性。何なんだこいつらは。新しい全集を出すなら全く新規に企画するか、逆に全く同一内容にするか、あるいは完全下位互換にするか、どれかにして欲しい。中途半端で混乱を招く。また、無駄に微妙に邦題を変えたり変えなかったりするのも勘弁して欲しい。邪推だが、コンテンツのラベルだけを付け替えて再使用を繰り返して稼ぎたかったとしか思えない。……そう言えば「少年少女世界科学冒険全集」版か「世界の科学名作」版かは忘れたが、昔読んだ『宇宙戦争』(Between Planets)の表紙絵にウェルズの火星人の三脚戦闘機械が描かれていて子供心に読者を舐めるなと思った記憶がある。
(2)全集名の類似性。元祖の石泉社は良いとして、後続の講談社・岩崎書店はなぜこうも紛らわしい名前を付けたのだろうか。「少年少女科学小説選集」、「少年少女世界科学冒険全集」、「少年少女宇宙科学冒険全集」、「少年少女世界科学名作全集」って彼ら自身が瞬時に区別が付いていたのか? 付くつもりだったのか?

追記:ラインナップを見ていて、自分のバイブル(の前身)である「SF少年文庫」と「少年少女世界SF文学全集」の完成度・洗練度に改めて気が付かされた。他社の全集とはレベルが違う。
そして石泉社の全集が、年代と、最古である割にはすでに驚嘆すべき完成度・洗練度に達していたことにもようやく気づいた。『未踏の時代』によると福島正実の初期の仕事らしい。さすがだ。
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