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プロジェクト・サイラス・スミスBLOG

ホームページ「プロジェクト・サイラス・スミス」http://projcyrussmith.moto-nari.com/ のブログ部分です。メインのコンテンツ(翻訳したSF)自体はホームページ側にあります。ブログ側にはSFのレビューなどを投稿しています。 ※SF翻訳活動は、実用度の高い機械翻訳の台頭により意義を失ったと考えるため、2021年以降はほぼ休止しています(2021/4/14投稿を参照)。 ※ブログ内のエントリ間のハイパーリンクはまれに切れている場合がありえます。お手数ですが検索機能をご活用ください。

SFにおけるウラシマ効果の発祥を探る

結論から言うと、『SF百科図鑑』(サンリオ)によれば
実際はもっと以前、1930年代に、このテーマはかなりの注目を集めており、マイルズ・J・ブリューアーのThe Fitzgerald Contraction「フィッツジェラルド収縮」とその続篇The Time Valve「時間バルブ」そして、これはかなり有名な作品だと思われるが、L・テイラー・ハンセンのPrince of Liars「嘘つきの王子」に既に登場している。だが、ほかの作家たちは、その後20年間、実証が集積され始めるまでは、ほとんどこのテーマを取り上げようとしなかったのである。(p84より)
とある。そうだったのか。

確かにSF者の実感として、50年代以降のSFには相対論的時間の遅れが言わば「常識」として登場するが、1940年代以前の作品では奇妙なほど――恒星間飛行は戦前から描かれていたし、相対性理論も知られていたはずなのに――それを見かけた記憶が無い。

ちなみに日本のSF読者が最初にそれを認知したであろうL・ロン・ハバードの『宇宙航路』は1954年刊行のようであり、特に先駆的な作品ではないようだ。

なお、この件を調べてみたきっかけは、たまたまProject Gutenbergでフランク・ベルナップ・ロングの"Atomic Station"(1946)という短編を読んだところ、珍しくウラシマ効果がメインテーマの一つとして取り扱われていたことである。おそらくこれは30年代と50年代をつなぐ数少ない作品の一つと言えるだろう。

さて、本件を調べていて一つ悟った。インターネットの魔力は凄まじいが、昔ながらの書籍もまた侮りがたいことである。そして、両者が複合するとさらなる威力を発揮することである。
実は、『SF百科図鑑』を開く前に日本語のみならず一応英語でも少々ググってみたのだが――語学力や検索力の不足もあるかもしれないが――ブルウアーにもハンセン(初めて知った。興味深い作家だ)にも全く辿り着けなかったのである。厚めのリファレンスをいちおう常備しておいて良かった。
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