SFロマン文庫第7巻、『アーサー王とあった男』を紹介します。
本書については手元にない状態で本稿を書いたので、至らない点はご容赦ください。
レビュアーが本書を読んだのは本文庫中ではおそらく中期ごろでしたが、当時はまだ古典の値打ちが分からず、ピンと来なかった記憶があります(→
クラシックSFを読むスキル)。なので本文庫の収録作品としては珍しく、少年時代にあまり多数回は読み返してはいません。また、いっぱしのSF者になって以降は本書でなくハヤカワ版や創元版のような成人向けの版を読むようになったので、本書そのものを最後に読んだのはかなり昔です。なのでおぼろげな記憶を頼りに本稿を書いていますので、至らない点はご容赦ください。
【ビブリオグラフィ > 基本データ】
巻号:7
題名:アーサー王とあった男
原書:A Connecticut Yankee in King Arthur's Court (1889)
著者:マーク・トウェーン (Mark Twain)
訳者:亀山龍樹
イラストレーター:ダニエル・カーター・ベアード
対象年齢:小学校高学年程度(※レビュアーによる見解)
【レビュアーによる評点 (S, A, B, C, D) 】
作品の内容や価値については周知の事実であるため評価は無用と考え、省略します。
【解説】
SF少年文庫/SFロマン文庫には少ないクラシックの一つです。
総文字数(254p*45字*16行=182,880)を、創元版の文字数(562p*43字*19行=459154)と比較すると、単純計算だと4割程度の抄訳ということになります。その割には、記憶している限りでは主たるエピソードや登場人物が削られているということは特にありません。秀逸な抄訳術と言えましょう。また、マーク・トウェインというユーモア風味の強い作家に亀山龍樹という訳者を充てる采配も見事かと思います。
【イラストについて】
原書の挿絵を使用している(と思われる。レビュアーは本書のイラストを記憶していないので)のは、本叢書中では唯一の例です。良い判断だと思います。細密かつユーモラスな画風が作品に実になじんでいます(と思われる)。
ただし多くの資料において(実物においても?)「D・N・ベアード」とあるのは誤記ではないでしょうか。Daniel Carter Beardのはずなので。
なお、いくつかのウェブサイトによると、表紙絵のみ斎藤和明が描いているようです。表紙絵と挿絵の画家が異なるのはおそらく本文庫中では本書のみです。言われてみれば画風が違いますが、違和感はありません。力のある、良い絵だと思います。斎藤和明と言えば個人的には初期のハヤカワSF文庫でよく見かける人というイメージで、その範疇ではあまり好きでない絵が多いのですが、本書の表紙絵に関しては名画だと思います。
【ビブリオグラフィ > 異版情報】
SF少年文庫 → SFロマン文庫 → SF名作コレクション(タイトル変わらず。内部イラスト変わらず。表紙絵は斎藤和明からベアードの原画のコラージュに変更)。
SF名作コレクション版の実物は見たことがありませんが、Web上で表紙サムネイルを見た限りでは、SF名作コレクションで唯一納得の行くイラストですね(斎藤和明の表紙絵が無くなったのは残念ですが…)。