アシモフは超ビッグ・ネームですが、本シリーズは意外とマイナーなように思えるので、紹介しようと思います。
【ラッキー・スター・シリーズとは 】
「ラッキー・スター」シリーズ (Lucky Starr series)とは、アイザック・アシモフが変名ポール・フレンチ (Paul French) として1950年代に執筆したジュブナイルSFのシリーズです。全6巻。
【執筆経緯】
テレビ化を前提としたジュブナイルSFを注文されたアシモフが、テレビという賤業との関わりが明らかにならないよう変名を使って書き始めた。しかしテレビ化の話は白紙化されたので、途中からはアシモフであることを隠さず書き続けた。第7作"Lucky Starr and the Snows of Pluto"も構想はしていたが、ノンフィクション執筆に専念するために書かずに終わった。…とのことです。
【内容】
舞台は数十世紀後の太陽系。地球政府と太陽系外植民地群は冷戦状態にある。特にシリウスが反地球の急先鋒で、国力的にも油断ならぬ敵である。
主人公は地球政府の高官と深いコネのある若き万能スペースマン――まあ、やや現実的なキャプテン・フューチャーと思ってください――で、自らの快速宇宙船を駆り、光線銃の達人ビッグマンを相棒にして、太陽系内を駆け巡り、悪党やシリウスのスパイと知的に戦う、というのがシリーズの主旨です。
アシモフが仮面をはずした4作目以降はロボット工学三原則がしばしば登場し、物語上で重要な鍵になることもあります。
公式には、本シリーズはアシモフの未来史の正史に取り込まれていないようですが、スーザン・キャルヴィンの時代とイライジャ・ベイリの時代の間の長い空白期間の真ん中へんに収まりそうだと読み取れるのも面白いところです。
【読書ガイド】
シリーズは長編6編からなり、各巻は単独でも一応は読めますが、以前の巻の事物が多少は再登場したり、巻を追うごとにシリウスの陰謀の核心に近づいていくという構造なので、なるべく頭から正しい順序で読むのがベストです。
しかしながら邦訳は一つのレーベルからまとめて出ておらず、また巻号が分かりづらく、読みにくいです。そもそも第3作が未訳です。また第4作は完訳ではありません。
【リスト】
題名等は次のとおりです。
(2) Lucky Starr and the Pirates of the Asteroids (1953) 小惑星の海賊(角川文庫SFジュブナイル 宇宙監視員ラッキー・スター②)
(3) Lucky Starr and the Oceans of Venus (1954) ※未訳
(4) Lucky Starr and the Big Sun of Mercury (1956) 水星基地のなぞ(少年少女世界科学名作全集)※ビッグマンが「少年」であるなど、多少の改変を加えた抄訳。
(5) Lucky Starr and the Moons of Jupiter (1957) 九号衛星のなぞ(少年少女宇宙科学冒険全集)/木星のラッキー・スター(SF少年文庫/SFロマン文庫/SF名作コレクション)